基礎用語のミニガイド

下の表は、本文でよく出てくる専門用語を「そもそも何なのか」という視点で言い換えたものです。読み進めながら気になったら、いつでも戻って確認してください。

ビルドと全体構造

“ビルド”とは、ソースコード（設計図）をコンピュータが実行できる形に変換する作業です。LAMMPS 2001 では src ディレクトリにある二段構えの Makefile（ビルド用レシピ）がその作業を支えています。大枠を決めるトップレベル Makefile が作業場として Obj_<target> フォルダを作り、その中にコピーされた Makefile.<target> が実際のコンパイルとリンクを担当します。

複数の CPU で計算させる場合は MPI を使いますが、PC 1 台で試すときは serial ターゲットを選べば OK です。このときは src/STUBS にある“代役”の MPI ライブラリがリンクされ、MPI ライブラリを別途用意しなくても動く仕組みになっています。

作業の手順を料理の流れに置き換えると次のようになります。

1. Depend.pl を走らせて「どのファイルがどれに依存しているか」を調べ、結果を Makefile.depend に書き出す。
2. make <target>（例: make linux）を実行してソースをコンパイル。target は使いたい環境の呼び名。
3. コンパイルが終わると自動でリンク（部品の合体）が行われ、lmp_<target> が src 直下に置かれる。
4. 必要に応じて tools や converters の補助プログラムを個別にビルド。
5. 最後に examples フォルダの入力スクリプトとデータを使用して動作確認。

依存関係とコンポーネント構造

+--------------------+         +--------------------+
|      converters    |         |        tools       |
|  (AMBER/MSI ⇔ LMP) |         | (データ生成/加工)  |
+----------+---------+         +---------+----------+
           |                             |
           v                             v
     +-----------+               +---------------+
     |  data &   |               |  examples/    |
     |  restart  |               |  input/output |
     +-----+-----+               +-------+-------+
           \                             /
            \                           /
             v                         v
            +-------------------------------+
            |            src                |
            |  Fortran90 core & FFT (C)    |
            +---------------+---------------+
                            |
                            v
                     +-------------+
                     | lmp_target  |
                     | (実行ファイル) |
                     +-------------+
      

Intel oneAPI ifx/icx を用いたビルド手順

環境準備

1. Intel oneAPI Base & HPC Toolkit をインストールし、Intel oneAPI Command Prompt または PowerShell 用 setvars を起動。
2. setvars.bat（または setvars.ps1）で ifx/icx をパスに登録。
3. リポジトリのルートに移動し、cd path/to/lammps2001/src を実行。

Makefile 調整

1. Copy-Item Makefile.linux Makefile.oneapi でテンプレートを複製。
2. Makefile.oneapi 内で F90 = ifx、CC = icx、必要に応じて MPIF90 = mpiifx、MPICC = mpiicx に変更。
3. MKL FFT を利用する場合は -DFFT_FFTW と -qmkl を追加。
4. 必要なら perl Depend.pl を実行し依存ファイルを更新。

ビルドと検証

1. make oneapi を実行し、lmp_oneapi を生成。
2. シリアル実行時は cd STUBS → make でスタブライブラリを作成後、make serial を実行。
3. lmp_oneapi -h でヘルプを確認し、mpiexec -n 4 lmp_oneapi < ../examples/lj/in.lj.nve などで動作検証。

サンプルプログラム実行ガイド

以下は oneAPI でビルドした lmp_oneapi を想定しています。ビルドターゲットに応じて実行ファイル名を調整してください。

共通手順

1. cd path/to/lammps2001/examples
2. 対象サブディレクトリ（例: cd lj）へ移動。
3. 必要に応じて tools 内ユーティリティでデータを再生成（例: .. .. tools\setup_lj.exe < def.file > data.lj）。

Lennard-Jones 系 (examples/lj)

1. lmp_oneapi < in.lj.nve を実行。
2. ログは log.lammps または log.in.lj.nve.* として出力。
3. MPI 実行例: mpiexec -n 4 lmp_oneapi < in.lj.nvt。

液晶分子 (examples/lc)

1. lmp_oneapi < in.lc.big.ewald を実行。
2. 診断を利用する場合は diagnostic_temp_molecules.f を src のビルド対象に追加。
3. 再スタート検証: in.lc.small.restart.first → 生成された restart.* を in.lc.small.restart.second で再利用。

AMBER 変換ワークフロー

1. python converters\amber\amber2lammps.py ... で AMBER 形式から LAMMPS 入力へ変換。
2. 生成したデータファイルを examples もしくは独自入力で利用。
3. 実行後の dump を dump2trj.py で TRJ に変換し可視化。

ディレクトリ詳細